さあ、マー君で日本一だ。球団初の日本一に王手をかけた楽天は、今日2日の日本シリーズ第6戦(Kスタ宮城)でエース田中将大投手(25)が先発する。仙台へ戻って同球場で練習を行った1日は、田中の25歳の誕生日だった。例年はオフに入っている記念日が、今年は大一番の前日。来季からメジャー挑戦となれば、今日の登板が、日本で最後の勇姿となる可能性もある。今季1度も負けていない男が、日本中から注目されてマウンドに立つ。

 日本シリーズを戦っているから、迎えられた瞬間だった。Kスタ宮城の一室。25歳になった田中に、報道陣からバースデーケーキが用意された。

 「何年ぶりだろう。1年目の時はシーズンが終わっていたけど、報道陣の方が祝ってくれた。それからはなくて、寂しかったです」

 ちゃめっ気たっぷりに言った。敗退したチームは、秋季練習中。昨季までの田中は、11月前半はオーバーホールに充てていた。誕生日に、表に出る機会はなかった。シリーズ中だから設定されたお祝いの場。「違和感ありますね。こうやって迎えたくても迎えられなかった。こうして戦っている時に誕生日が来た。うれしいです」と照れた。

 ろうそくの火を一息で消すと、田中と夫人の里田まいの似顔絵がデコレートされたケーキをパクリ。フォークに取ったのは、縁に飾られた星形のホワイトチョコレートだった。「星ね!」とニヤリ。文字通り、白星を食らった。第2戦に続く白星は、日本一を意味する。

 ただ、注目を一身に集めても、いつもと変わらなかった。巨人打線の印象を聞かれ「いまさら言うことはありません。もちろん、相手はつぶしに来る。僕は、それ以上の気持ちで向かって行けたらと思います」とキッパリ。日本一がかかるマウンドとなるが「楽しみですよ。でも、王手がかかっている、かかっていないの違いだけ。変な緊張感は、前回(第2戦)よりないと思う」と力みはない。

 リーグ優勝とCS突破を決めた試合は、抑えで胴上げ投手になった。先発する今回は、完投しか胴上げ投手にはなれない。星野監督は「誕生日は明日に取っておけよ。(完投は)当たり前。たくさん点をとってやるから頑張れ」と期待した。田中は「相手があること。試合展開次第です」と色気は見せなかったが、エースが完投する展開なら、グッと勝利に近づく。

 このオフにも、ポスティングシステム(入札制度)を使って大リーグに挑戦する可能性がある。第7戦以降までもつれる場合を除けば、今日が日本で投げる最後の試合となるかもしれない。そのマウンドでほしいものは、ただ1つ。「チームの勝利か」と聞かれ、「もちろん!!」と元気よく答えた。てっぺんを取る準備を整えた。【古川真弥】